大判例

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東京高等裁判所 平成5年(う)905号 判決

被告人 服部道明

〔抄 録〕

論旨は、要するに、原判決が被告人に対し金二一四万円を追徴金として科したことにつき、その価額算定の根拠が明らかでなく、仮に本件NBC株の上場初値と公開価格との差額相当分をもって賄賂の価額としたのであれば、それは理由がないから、原判決には理由不備の違法があるというのである。

そこで検討するに、原判決が、本件NBCの新規公開株式一〇〇〇株について株券受渡期日に株主となるべき地位を賄賂であると認め、その価額を同株の上場初値(一株六四〇〇円)と公開価格(一株四二六〇円)との差額合計二一四万円であると算定し、これを追徴金として科していることは、原判示の理由を全体として見ると、明らかである。問題は、右算定の合理性ないし相当性であるが、関係証拠によれば、本件が行われた昭和六二年に東京証券取引所市場第二部に上場された株式銘柄のうち公開価格と上場初値とを比較し得る二七銘柄につき、後者を前者で除したいわゆる乖離率を算出すると、いずれも値が一を上回り、その平均値は一・三四であったこと、また、右二七銘柄の上場一箇月間の高値、安値及び終値の公開価格からの各平均乖離率はそれぞれ一・五一、一・二三及び一・三六であったこと、さらに、前年の昭和六一年の上場銘柄については、上場初値の公開価格からの平均乖離率が一・三一であったこと、そして、本件NBC株については、公開価格が四二六〇円であったのに対し、買い気配が強くて上場当日とその翌日は初値が付かず、翌翌日になってようやく六四〇〇円の初値(乖離率一・五〇)が付き、その後上場一箇月間の高値、安値及び終値が、それぞれ八〇一〇円(乖離率一・八八)、六四〇〇円(同一・五〇)及び六八一〇円(同一・六〇)と高水準で推移したこと、本件と同年に上場された前記二七銘柄のうち、上場初値の乖離率が本件の一・五〇を上回ったものが六つあったことのほか、当時株式市況全体が堅調で株価が上昇傾向にあったことや、NBCが前記のとおりの優良会社であったため、その株式が上場されれば人気を集めると一般に予想されていたことの各事実が認められ、以上のような事実関係のもとでは、NBC株の上場後最初に付いた株価である初値と被告人が本件新規公開株式引受けのために支出した公開価格との差額をもって本件賄賂の価額と認定することには、十分な合理性ないし相当性があるというべきである。したがって、原判決には所論の理由不備は存しない。

(花尻 豊田 飯田)

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